さまざまな土地や場と出会い、縁を結んできた手塚清さんに、土地の見極め方や価値について話を聞きました。(聞き手:サカキテツ朗)
サカキ:自然豊かな場所や都心など、どんな風に土地や場所を探しているのですか?
手塚:土地の価値の見極めというのは、自然の中でも都心でも、ピンポイントです。そこ以外はもうなしという感覚ですね。
サカキ:それは自分の目で見て感じて判断されているということですか?
手塚:そうですね。自分の感覚ですね。自分の目で見て、ここだ!と感じたところです。
サカキ:都心といっても交通アクセスがいいからいい場所というわけではない?
手塚:そうですね。例えば代官山は交通の便はよくないですが、行くと雰囲気がありますね。その中でもこのビルがいい、となります。
サカキ:なるほど。手塚さんは直感を大切にされながらも、よく観察されていますよね?
手塚:気になったら何度も足を運びます。雰囲気や人通りなど自分で感じるようにしています。
サカキ:他に大切にされていることはありますか?
手塚:昔から人が集う店だったとか、ストーリーを持っている場所も魅力を感じますね。
サカキ:手塚さんにとって気になる場所がたくさんありそうですね。
手塚:そうですね。日本中、北海道も九州もいいところはたくさんあります。これまでは銀座が一番というような価値観がありましたが、ちょっと視点を変えるだけで、土地の価値を変えることができると思っています。
サカキ:場所を見た時にどんな風に活用するか考えるのですか?
手塚:例えば、北海道の広大な森の中に立つと、これまでにないリゾートホテルを作ったらどうだろうとか、色々なアイデアが浮かびます。今までと違うものを作りたいですね。
サカキ:まず場所ありき、なのでしょうか?
手塚:場所を見つけることが先なんです。コンテンツはいくらでも自分の中にあるので。場を人間の力で変えていかなければいけないと思います。
サカキ:こうしたらこの場所を生かせるということですか?
手塚:今までの価値観ではなく、土地はこういう風にすると楽しいというような、例えば10年ぐらいで建て替えるぐらいのゆるい感じで作るのもいいですね。
サカキ:確かに期限があることはいいと思います。
手塚:同じように思いますね。人生も終わりがあるし、終わりのある仕事はすごく頑張れる。
サカキ:京都を選んだのはなぜですか?
手塚:18歳の頃から好きで、ここ15年ほど通っています。
サカキ:京都の中でも、ここだった?
手塚:鴨川沿いを3年ぐらいずっと探していたんです。鴨川の力を借りようということで探していてやっと行き着いた場所です。
サカキ:どんな場所ですか?
手塚:荒神橋は神様の橋で、「京の七口」(京都と諸国とを結ぶために設けられた街道の出入口)の一つ。京都御所もすぐそばにあり、いい場所です。
サカキ:鴨川沿いであることも大きな理由ですね?
手塚:あらゆる世界を構成している地、水、火、風、空の5つの要素が全てある場所です。鴨川は何百年も前から流れていて、当時の人々も愛しんでいたでしょう。
サカキ:山があって川があって、人々の暮らしも感じられます。
手塚:そうですね。私の中には自然という大きなテーマがあるので、鴨川があって、大文字山などの山があるこの場所はとても大事な場所です。
サカキ:この場所もストーリーがあるのですか?
手塚:ここが建てられる前は「リバーバンク」という喫茶店がありました。1959年創業で、学生運動が盛んだった頃は京大生の溜まり場だったそうです。映画のロケにも使われたりしていたそうです。
サカキ:パワーを感じられる場所ですね。
手塚:色々な人が躍動した場所だったんですね。
手塚清
株式会社MAIN代表取締役。
1984年、那須塩原市に株式会社庫や創業。35年にわたり「CHEESE GARDEN」を運営。
サカキテツ朗
2005年、コミュニケーションをデザインするサカキラボを設立。行動心理学に基づいたブランディングに数多く携わる。大正大学客員教授。