「ゆらぐ be with light」 に参加されたアーティストのコメントをご紹介します。
それぞれのアーティストの作品への想いを知ると、今後、作品の見方が少し違うものになるかもしれません。
今回の作品は元々、金属の彫刻をデジタルカメラとオールドレンズで撮影していて、オールドレンズは設計とコーティングが古いので光が滲んだり歪んだりするんですね。空中に浮いている作品なので落とすとよく壊れる。それをどうやってデジタルアーカイブできるかなということを常に考えていて映像に変換し始め、オンラインで展開しています。番号が若いものほど原型をとどめていて、よく見ると空が映り込んでいたり、場所のコンテンツが映り込む作品です。
デジタル化した作品を輝度の高いLEDで出してみると、コントラストが良くてこのような日光が入るところでもきれいに見える。解像度が粗いですが輝度が高いのでそれを感じさせません。
また、これらのデジタル作品からリコーとの連携で生まれた新たな平面作品は、絵画的な趣があります。大阪関西国際芸術祭で展開していた作品をこちらで再インスタスレーションしたものですが、開放的なそばに水が流れてぬるぬるしている空間で、デジタルでぬるぬるしているものとかぬるぬるしている一瞬を固めたようなものがあるとそれはいそれでいい風景だと思います。インスタレーション作家なので風景の中に作品を溶け込ませるのがライフワーク。銀でぬるぬるしているものを作っていますが、こういう空間と相性がいいと思います。
落合陽一
メディアアーティスト。1987年生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程終了(学際情報学府発の早期修了)、博士(学際情報学)。筑波大学デジタルネイチャー開発研究センター センター長、准教授・JST CREST×Diversityプロジェクト研究代表。https://yoichiochiai.com/
ネオンサインを実際に作っていただき、それを見て描くという方法で絵画作品を作っています。多くの人はネオンを見るとネオン管の部分を思い描くと思いますが、光るにはその後ろの配電線やフレームといったガラス管を支えるところが不可欠で、それによってネオンは光ります。人が光を見る背後にある、人が注目しない部分を光と同等の価値として立ち上がらせたいなと思って描いています。光というのは美しいものとか希望、憧れというイメージがありますが、それに注目していると同時に自分の見たくない本来の自分自身が見えてくるというところもあります。そういう部分をどう受け入れて生きていくのか絵画を通して表現したいと思っています。
窓について
美術の中でいうと絵画が一つの窓で別世界を表します。古典絵画は額があって窓の役割があり、違う世界に近づくための一つの装置という役割でした。この窓の作品はいかに自分が絵画を描けるのかを自問自答するなかで、「絵画の窓よ開け!開けごま!」みたいなイメージがあります。自分の理想、願いの先にそれを阻む配電線とかフレームがある、それは自分なんです。理想を追い求めてもそこには自分はいなくて、自分が本来見たくないどうしようもない自分が見えてくる。ただ、それを受け入れないと絵画は描けない。普段見えない、人が見たくないものを重ね合わせて、絵画を描きたい、入っていきたい自分と田舎者の自分がいるという自画像的な作品です。
ペインティングという文字について
ペインティングという文字は文字の練習と絵画を練習することを重ね合わせています。ネオンの中でも2つのパターンがあり、自画像というシリーズと自分の周りにいる人に言葉を書いてもらって描くパターンがあります。肉筆はその人そのものが表れ、人生が宿る。そのままネオンに再現して描くことでその人のポートレートのようになります。
横山奈美
1986年岐阜県生まれ。2010年愛知県立芸術大学 油画専攻卒業。2012年愛知県立芸術大学大学院 美術研究科 油画版画領域修了。https://www.namiyokoyama.com/
レギーネ・シューマンはドイツのケルンに住んでいます。日本が大好きで随分前に滞在していたこともあります。作品はアクリルを鋳造するときに蛍光顔料の粉を射込んだオリジナルのアクリルでできています。特許のようなものを持っていて、彼女以外にその素材を提供することはできないというものです。moonというタイトルの作品は彼女がコロナ禍でステイホームしているときに思いついた作品です。コロナ禍でディスタンス、距離ということを言うようになったとき、世界のどこからでも月は見える、月と地球は永遠の距離を保っているということが表現されています。(タグチファインアート・田口さん)
レギーネ・シューマン Regine Schumann
1961年ドイツ、ゴスラー生まれ。ブラウンシュワイク美術大学で絵画を学び、1989年にロラント・デルフラーからマイスターシューラリン資格を取得。2000年にはノルトライン・ヴェストファーレン州の奨学金を得て日本に滞在し、現在はケルンを拠点に活動。http://www.taguchifineart.com/