都市の魅力 - intangible archivesintangible archives

栃木座禅道場にて毛塚幹人さん(左)、サカキテツ朗。

都市の魅力

最年少副市長として茨城県つくば市で活躍し、2022年から宇都宮に拠点を移し、さまざまな活動を行っている毛塚幹人さん。都市の魅力について人間禅の栃木座禅道場でお話をうかがいました。
(聞き手 サカキテツ朗)

地域それぞれの魅力

サカキ 宇都宮出身で、今も住んでいらっしゃるそうですが、宇都宮の魅力はどんなところにありますか?
毛塚 都市としての複雑性と厚みがあることですね。二荒山神社の門前町として始まり、城下町や宿場町など徐々に色々な要素が積み重なり、明治の都市計画によって生まれた強い骨格の中にも昔ながらの街並みが残っていて面白いです。
サカキ なるほど。それぞれの地域に魅力がありますよね?
毛塚 そうですね。趣味で全国の県庁所在地に行くことが多いのですがそれぞれに特色を持った厚みがあると感じています。
サカキ 今までは東京との近さなどと言われがちだが、そういうことではない?
毛塚 東京都の近さや移住促進、企業誘致などが注目されがちですが、削り合っている側面もあり、そことは違う軸でも考えないといけないなと思っています。これまでの地方創生も人口を増やすことだけに焦点が当たりすぎているような気がしています。地方の中核的な都市で単に短期的に人口を増やすなら開発により新しい宅地を拓けばある程度は増やせますが、必ずしも持続可能な都市にはなりません。日本のそれぞれの地域の持っている魅力も大切にして行く必要もあります。
サカキ アメリカは都市によって産業も法律も税金も違う。アメリカなどの方々がライフスタイルに合わせて自由に移り住んでいるのは羨ましい気がします。日本でも価値観の合う場所を選んで住むことができれば楽しいと思います。
毛塚 日本にもさまざまなライフスタイルや価値観があると思いますが、どうしても同じような都市がつくられがちです。最近では文化財のような街並みは守られますが、昭和などの味のある街並みが守られにくく街の魅力が安易に失われることも多いのを課題に感じてみます。宇都宮も昔ながらの小さなお店があったり、いい味を出している看板があったりしますが、伝統建築ではないのでなかなか守られず、経済合理性の中に晒せれて取り壊されて駐車場などに変わってしまうことも多いです。法律だけが守る術ではないので、どういう風に守っていけるか考えています。

地域の人が魅力を作る

サカキ 最終的に正しいとされるものに落ち着かせるのがいいことだという風潮がある中、意識が大事な気がします。
毛塚 そうですね。例えば再開発では補償で土地を買い上げるというのもありますが、こういう街の雰囲気を残してほしいとかこの路地を残してほしいとかさまざまな思いがあると思います。そんな金銭換算できないところも大切にできるといいなと思いますね。
サカキ 日本でも京都など昔ながらの建物が残されている地域もありますね。
毛塚 京都もお寺などは文化財として守られるのですが街並みはそういうふうに守る術が少ない。だからこそ街並みを守るのは行政に任せてできることではなくて、地域の人たちの価値観とかそこでの小さなリーダーシップがとても重要だと感じます。栃木県内のカフェでも、ローカルルールを設けている店もあります。何人以上は入れないとか。店の雰囲気や地域のカルチャーを守る上で重要なことです。
サカキ 確かに、行政はタッチしなくてもいいような気がします。ルールで縛る時代ではないし、経済成長の面で言うとようやく考えられる土壌ができてきたと思います。
毛塚 そうですね。街づくりの中でどう都市を人の手に返していくのかがキーワードです。今までだと行政で都市計画を決めてその中でデベロッパーが入って開発していくというやり方でした。エリア単位で魅力を考えていくようなエリアマネジメントを地域の方々が取り組まれるようになって来ています。

毛塚幹人
宇都宮市出身。東京大学法学部卒業後、2013年財務省に入省。2017年から4年間茨城県つくば市副市長を務める。現在は地方自治体の政策立案や経営支援に携わる。那須塩原市・さくら市市政アドバイザー、三重県DXアドバイザー。

サカキテツ朗
2005年、コミュニケーションをデザインするサカキラボを設立。行動心理学に基づいたブランディングに数多く携わる。大正大学客員教授。