思いを形にすることで、見えてくる未来とは? ともに建物を作り上げてきたデザイナーの森井良幸さん、手塚清さんに話を聞きました。 (聞き手:サカキテツ朗)
サカキ:改めて、手塚さんの思いを汲み取って具現化して形にしたのはすごいなと思います。
森井:正直用途がしっかり決まっていない仕事は意外とないので、もやもや感は多少ありました。でも、だからこそできたこともある。最初からギャラリーと決まっていたら全部壁にして形だけで見せましょうということになっていたかもしれないです。
手塚:すごく贅沢な話だと今でも思っているのですが、「良きもの」をつくるということに徹することを心がけました。
森井:本当に贅沢です。
手塚:そうですね。贅沢というより価値あるものができあがったような気がしています。
サカキ:費用対効果を超えたところのものが面白さにつながっていくこともある気もします。
手塚:価値を生むということは決して利益をあげるということではなく、そのものがその場で躍動し、あり続けるということが大切だと思うのです。
サカキ:ここではどんなことをされるのですか?
手塚:建物に価値と魅力があり、そこで行われるさまざまな「コト」や仕組みが文化的にも芸術的にもそして経済的にもしっかりと回ることを創造していきます。
森井:そういう時代ですよね。
手塚:人の能力と芸術性のある仕組みの力、そんな場を作るということかなと思っています。今後もそういった場づくりはやっていきたいです。
サカキ:具体的な場所は決まっているんですか?
手塚:やりたいところは何箇所かありますが、その中でも北海道や京都郊外でやれたらいいなと思っています。
サカキ:広がりがあると面白いですね。
手塚:ソフトや思想の点と線を結んでいかなきゃいけない。そうなってくるといくつかの場所を持つと面白いし、一つの形ができると思います。
サカキ:他に決めていることはあるのですか?
手塚:マーケットを気にして仕事をするのはやめました。マーケットありきではなく、「コト」の思想ありきにしたほうがいいなと。これまでマーケットありきで仕事をしてきたから(笑)
森井:手塚さんはチーズガーデンの時も、やっていく中でチーズガーデンになっていったと思います。それと同じことがここでも起きるのでは?マーケットを意識するといいながら、結果マーケットを作っていました。作る事業者が一番強いです。
手塚:本当にその人の人となりや感性の情報を知り、これがいいんじゃないですかと提案するビジネスはすごくいいと思います。相手とのコミュニケーションも深くなりますよね。これからの時代、全て出尽くしたとは感じますが、まだまだ新たな気づきがあるように思います。これからも新たな気づきを求めながら頑張っていこうと思います。
森井良幸
空間デザイナー・飲食店経営。
1967年京都生まれ。1996年、株式会社カフェ設立。
飲食店経営に携わるとともに、ブティックやクラブ、ダイニングやカフェなどの内装設計を手掛ける。現在は集合住宅や複合商業施設など、建築物の設計も手掛け、14店舗の飲食店を経営。
手塚清
株式会社MAIN代表取締役。
1984年、那須塩原市に株式会社庫や創業。35年にわたり「CHEESE GARDEN」を運営。
サカキテツ朗
2005年、コミュニケーションをデザインするサカキラボを設立。行動心理学に基づいたブランディングに数多く携わる。大正大学客員教授。