台湾の日常に根付き、
繊細な味わいで体にもやさしいと最近話題になっている素食。
素食とはどんな料理なのか、
素食研究家の松永智美さんにその魅力について教えてもらいました。
手塚:素食とはどんな料理ですか?
松永:動物性の食材を使わない中華における菜食料理です。素食というと美味しくないのでは?と思う方もいらっしゃると思いますが、それはないのでご安心ください。
手塚:食材はどんなものを使うのですか?
松永:肉や魚介などの動物性の食材は一切使わず、野菜、きのこ、豆類を中心に使います。三厭(さんえん 鶏、肉、魚)と五葷(ごくん ねぎ、にら、にんにく、らっきょう、玉ねぎ)を避けるというルールがあります。
手塚:体に優しい感じですね。
松永:お坊さんの修行の料理なので、元気にするのではなく、体を内側から清め、心を穏やかに優しくするものです。
手塚:松永さんと素食との出会いはどういうものですか?
松永:母親が戦前、台湾で暮らしていたので、私自身も母親の作る台湾料理に親しんでいました。
手塚:並んでいる食材を見ただけで、こういう穏やかになれる素食料理を出す、6部屋ぐらいの最高のホテルがあったらいいと想像してしまいました。
松永:台湾の日常に幅広く根付いている料理で、台湾の1割の人が食べています。肉や魚を提供するレストランでも素食のメニューがあります。
手塚:せいろもたくさん用意されていますね。
松永:温かい料理と香りを楽しんでいただけます。私はそんなに調理していない、食材のお世話をしているだけといつも言っています。
手塚:松永さんは普段から肉などは召し上がらないのですか?
松永:私たちは肉も魚も食べますが、肉はダメ、玉ねぎもダメという厳しい制限の素食を知ったことで限られた素材の美味(うまみ)を引き出す魅力にはまりました。
手塚:全部削ぎ落としてから出てくるものなのでしょうか?
松永:そう思います。削ぎ落とすことで素材の美しさに気付く。そこから「美素食-meisushi-」という名前をつけました。素食はこれからの料理だと思います。
手塚:最後にこの場の印象について教えてください。
若林:階段の端とかキッチンの枠など細部までこだわってつくられている。各所のアールが京都の街と鴨川の丸みと一体となって心地いい空間だなと思わせてくれます。
松永智美
ジュエリーアーティスト、素食研究家。
京都市生まれ。ART/EAT「美素食-meisushi-」、ギャラリーアトリエ「貌-KATACHI-」主宰。
幼少より京舞を学ぶ中、造形美の影響を大きく受け、自然の素材―竹、麻、金箔、漆などを使うジュエリーの創作を始める。
1971年、母の松永ユリとともにカフェ「LA VOITURE(ラ・ヴァチュール)」を京都・岡崎にオープン。
2012年、台湾素食界の第一人者、洪銀龍氏に師事したことから「素食」の研究を始める。
2019年からARTとEATを融合させ、料理、空間、時間全体を味わう「美素食-meisushi-」として展開している。
若林麻耶
デザイナー・「LA VOITURE」オーナー。
武蔵野美術大学空間演出デザイン学科を卒業後、「LA VOITURE」を祖母の松永ユリから受け継ぐ。祖母が作り続けたフランス菓子「タルトタタン」の伝統を守り、進化させる一方で、空間構成、インテリア、グラフィックデザイナー、ディレクターとしても活動している。